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つまらない恋を忘れるには鮭チャーハン?!
『周富徳の中華人生相談』(周富徳/主婦の友社)

周さんが人生相談をしておいでだったとは、存じませんでした。雑誌Rayで連載していたそうです。
しかし、ウマイんですよ。まず、人生相談ついでに、中華料理が学べるところがウマイ。そしてもちろん回答もウマイ。どうやって中華と結び付けるのかと思ったら、なんかウマイこと、言いくるめられてる(笑)。
例えば、Q:「彼が嫉妬深くて困る」。これに対する答えは、一つはハッキリ言うこと。もう一つは別れること。恋愛は追って追われてが楽しいのであって、片方だけじゃつまらないんだな(あ、周さん口調がうつる)。それで、この場合、食べてほしいのは「ヤリイカとセロリの豆板醤炒め」なんですって。「イカとセロリを炒めて、豆板醤で辛みを出してある。この辛さがキメテだ。恋愛は甘いだけじゃない。辛さを味わってこそ、愛の真髄がわかるんだ」。いかがです? うまいもんでしょ? かなり感心させてくれます。うまいこと言う。笑点みたい(笑)。
因みに鮭チャーハンでは、「このさっぱりしたチャーハンでサッパリと決着をつける」などとおっしゃっておられます。ちょっと苦しいです。
数々のレシピは文句なく役立ちます。
編集者さんに乾杯の本でございます。

黒いトリビアがある─へぇ〜。
『黒のトリビア 新潮文庫』(新潮社事件取材班/新潮社)

黒いんです。裏、暗い、怖い、そんなトリビア集です。
ゾーッとしたい時や、暗い気持ちになりたい時にどうぞ。
「日本では、年に80人あまりの殺人者が野に放たれている」。日本の殺人事件検挙率は高水準の94%。しかし、年間1300超件なので、単純に捕まっていないのは80人超ということ。
「判決の最初に裁判官が『被告人は…』と、『は』から始めれば、言い渡しは無罪」。有罪なら『被告人○○に処す』になるそうです。
へぇ〜。
黒いですが、そこはあくまでトリビアなので、「警視庁には、チアガールがいる」とか、「山口県警のマスコットはフグだ」とか、ニヤリとさせてくれるものも多いです。「山梨県警はふじ君だ」、補足トリビア→富山県警は立山くん、静岡県警はサッカーボール、新潟県警は米。米って(笑)。
ま、小ネタに。
※現在定価¥420で流通中。

うちのカミさんが姿を現す!
『ミセス・コロンボ1 殺人ネットワーク サラブレッド・ブックス』(トム・レイシナ/二見書房)

『うちのカミさん』、と言われてピンと来る方、たくさんおいでのはずです。
もっさりしたコロンボ警部が、やんわり切り出す。「いやぁ、じつはうちのカミさんがね」。繰り広げられるエピソード2、3。犯人は油断したり、イライラしたり、ドキドキしたり、余計なことを言ったり。
コロンボ警部ファンにとっては謎の人物であった『うちのカミさん』がちゃっかり登場して、推理までしていたとは、存じ上げませんでした。でもイメージと違う〜。
私が想像していたのは、可憐だけどちゃっかりしてる、ってタイプだったんだけどなぁ。「好奇心旺盛でおせっかいで、お人よしで、バーゲンセールに目の色をかえる」タイプのようです。ま、結局は可憐ってことかしら?
ウチの在庫はこれ1冊ですが、シリーズのようですので、集められても楽しそうです。

→コロンボ刑事シリーズの在庫を検索

それを着たい!
『クラシック・ファッション・オブ・スポーツ 20'S&30'S STYLE』(ピエ・ブックス)

見て楽しい本です。元々、資料的な意義のある本なのでしょうが、単純に見て楽しい。ファッション誌と同じ楽しみです。あるいは、シネマファッションみたいなもので、「うわ、ソレ着たい!」と、コスプレ気分で思います。
今、仮装パーティがあったら、私は間違いなく、「ヨット観戦の御婦人」風で出席します。それか、「ポロ観戦の御婦人」風、それか、「乗馬観戦の御婦人」風。観戦ばっかかよ(笑)!
だって、要するに欧米の20、30年代ファッションなので、競技している御婦人のみならず、ただ観戦している御婦人だって、ステキなんです。あ、もちろん殿方も、クラシックなユニホームでステキ度2割増。

こんな感じ→で、全ページ写真のみ。時代的に、全モノクロなのがちょっと残念だけど、仕方ありませんよね。
『伯爵と呼ばれた男』(高口里純)の辺りを再読したくなると同時に、今度シネマファッション特集をしようかと思い付きました。

関連して?→ミニ特集・シネマの世界

岩波書店+司修+赤川次郎。
『角に建った家』(赤川次郎:文 司修:絵/岩波書店)

へぇ〜、こんな本があったんだ〜!
岩波で司さんはともかく、赤川次郎ですか。へぇ〜へぇ〜。
赤川次郎、殆ど読みませんので、はっきりとは言えませんが、「軽い筆致」、「薄気味悪い」、そんな印象がございます。これは、そんな持ち味の生きた幻想的な小品ですね。登場するのは中学生。ある日突然、角に建ったお屋敷のお話。さらっと読めます。
そのお話を盛り上げ、演出し、本好きにとってはむしろそれがメインであると思われるのが、司修の絵(コラージュ)です。

こんな感じで→、全カラー、見開きも多用。数も多めですので、楽しめますよ。
※流通中です。

正しいハゲ方。
『日々の暮し方』(別役実/白水社)

正しい退屈の仕方、正しい風邪のひき方、正しい待ちあわせの仕方、正しいお別れの仕方、正しいもののもらい方、そして正しい禿げ方などなど、全45章の正しい暮し方です。
思いがけない方向から切り込んできます。理詰めです。ロジックです。そんでもって笑えます。しかも真理もあります。
いいですか。
正しい禿げ方については、こうですよ。
「禿にとっての問題は、それが一気にやってくるのでなく、少しずつやってくるという点にある。当然ながら、一気にやってくるならいきなり禿だが、少しずつやってくると、禿である部分とない部分が混在することになる。そして禿である部分とない部分が混在する状態の美学を、我々はまだ完成させていない」。
ププププ。
おかしいから、もうちょっと引用します。
「これは多くの禿が間違えていることなのであるが、テッペンから禿げてはならない。理由は明らかであろう。テッペンから禿げはじめた場合、残存頭髪をドーナツ状に周囲に配置することになる。つまり禿が中央で独立して異彩を放つことになる」「つまり禿はそうであることとないことの区別がつき難い前頭部か、後頭部か、側頭部から、それとなくはじめるのが良策である」
クククク。おなかいたいー。
正しい生活の手引き。オススメです。
※流通中。ウチの在庫は単行本。Uブックスでも刊行されています。

あの人のその後。
『サンタの友だちバージニア―「サンタはいるの?」と新聞社へ投書した少女 ※送料無料』(村上ゆみ子 東逸子:絵/偕成社)

トシのせいか最近すっかり涙もろくなっちゃって、徳光さん以上に泣いています。
クリスマスが近づくと、日本でも話題になるこの投書とその回答のエピソードも、耳にする度、涙ぐみます。
えぇ話や。
何と言いますか、清々しい。あたたかい。人類って捨てたもんじゃないと思えますよね。平易な文章の中に人生の真実がある。何度聞いても、少女の問いに対する記者さんの答えには唸らずにはいられません。
というわけで私が注目していたのは主に記者さんだったのですが、質問した方の少女はその後どんな人生を送ったのか、この本ではそれがテーマです。心あたたまるエピソードのしめくくりにふさわしい、まっすぐで曇りのない人生で、なるほど本にする価値があるなぁと、少し恥ずかしくなりました。
記者チャーチさんの回答全文の原文も(訳文も)収録されていますので、アメリカ人がみんな知ってるという、かの名文を参照したい方にも役立ちそうです。
子供も読める易しい本です。

→クリスマスつながり

余計なお世話?
『夢の見積り書』(夢の見積り書制作委員会編/角川春樹事務所)

夢の見積り書を出してくれます。
ただ漠然と、一度でいいからこんなことしてみたいなぁ〜と思っていた夢の、詳細な見積りが出ちゃいます。ガーン(笑)。
でもね、意外に安いものがあってびっくりしました。
「本当の世界一周旅行を体験したい」…326万円也。「オーロラを目の前で観測したい」…43万円也。「世に認められるワイン通になりたい」…3万2千円也。へぇ〜、そう。
そして意外に高かったのは「悠々自適の自給自足生活・夢の田舎暮らし」…5975万円なーりー。「最高級の肉と魚を死ぬほど食べてみたい」…1540万円なーりー。そりゃ手が届かない、ウソちゃうか、と思ったあなた、いやいやなかなか正確ですよ。だって「SOHO開業のための見積り書」49万2800円。これなんか、結構ビターっときとりますから。経験者として賛成。まぁウチはなんちゃってSOHOですけどね。

そして最後に、一番驚いたヤツ。「地球を救う正義の味方になりたい」→「宇宙太陽発電所を建設して地球を救う見積書」…2兆3610億円也。これって安い気がします。東京都の税収4兆5000億円だもん。国家レベルで財産なげうてば可能なんじゃん?

なるほどなぁ。
『季刊 暮しの創造 13号(昭55年夏号) 特集:理想の装幀』(創芸出版社)

特集が理想の装幀です。
執筆者は寿岳文章、串田孫一、栃折久美子他。

古本屋とはいい職業で、知らないことがたくさんあってかまいません(と、思い込んでいます)。だって、あまりにも本はたくさんあって、専門外の本の方が専門内の本より、ずっと多いからです。
というわけで、本に関する本を読めば、いつも、「ははぁ、ははぁ、なるほど〜」と感心するばかり。特に装幀の話ともなると、デザインや工芸の話も絡んできて知らないことでいっぱいです。でも見てて楽しいんですよね〜。「あ、これは扱ったことがある」とか、「一度でいいから見てみたい」とか。そしてさらに、「うーん、これは良い装幀だったのか…」というのもあるから面白い。凝っているものは分かりやすいんですが、あっさりしたもののデザイン性を云々されると、黙って頷くしかない感じです。
とにかく、装幀について、その道の方のお話を聞きたい方、目の保養をしたい方にオススメの特集です。

因みにこの雑誌自体、初めて見ました。薄めですが、内容は充実、1冊で何回も「ほほぅ」と思わせてくれる、良い雑誌です。新着本vol.25にも少し混ぜましたので、ご覧ください。

あの人の弔辞。
『弔辞大全2 神とともに行け 新潮文庫 ※送料無料』(開高健編/新潮社)

弔辞ってバカにできないですね。
いろんな文士たちの死に際し、文士たちが贈った弔辞が収録されている弔辞集です。
これはシリーズ2冊目。
私の注目はやはり、
中井英夫の稲垣足穂への弔辞、また室生犀星の永井荷風への弔辞、唐十郎の寺山修司への弔辞、そのあたりに集中しちゃいます。
それを読むにつけ、思わず考えさせられたんですけど、弔辞というのは、亡くなった人の人生を総括して、思い出し悲しみ悼むわけでして、書く人の思想もまた色濃く反映されるんですよね。
書く人は、故人のどこに共感を覚えていたのか、それが非常にクッキリしてる。特にこれだけの文章家が書くともう!そこには一人の登場人物がいるかのように、きっちり性格付けされた故人がいるんです。
おろそかにできません。
アノ人に書かれたくないなら、生前にそう言っておかないと(笑)。

殊に、犀星の弔辞ならぬ荷風論は非常に良くて、犀星の悩み、犀星の人生観がはっきり表れています。犀星ファンとしては微笑みました。

→手紙つながり

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