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         インド人が評価するレトルトカレーは? 
        『ナイルさんのカレー天国』 
        (G・M・ナイル/マガジンハウス) 
          
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        雑誌BRUTUSに連載されていた「カレー天国」に加筆修正してまとめた本とのこと。 
         
        テレビのカレー特集で必ず顔を出す「ナイルレストラン」のナイルさんが全国の有名カレー店30軒を食べ歩いて星で評価しています。 
        でも私にとっては、北陸は1軒もないし、あんまり関係ないかと思ったら──レトルトカレーも食べてくれてるんです。うふ。ナイルさんが「口のなかにクミンなんかのスパイスの味がほのかに残る。これはカレーだよ」と言ってるのはどれでしょう? また、「いちばん好き。能書きとターバンのイラストは伊達じゃない」って言ってるのはどーれーだ? 答えは読んでのお楽しみ。 
        レトルト以外にも、カレーパンやカレーうどんも試食して意見を述べているところがグー。前から本場の方の意見を聞いてみたかったんだよなぁ。 
         
        行けそうにない地方のレポートもナイルさんのコメントが面白いのでヨシ。テレビと同じく、リアクションがイイんだ、この人は! 
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         ノーブラ?! 
        『裸・はんなり ロマンポルノ 京都ブックス』 
        (井戸幸一/京都書院) 
          
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        にっかつロマンポルノのスター女優たち総勢約50人のエピソードを収録しています。 
        これがね、あんまりやらしくないんですよね。なんじゃろ? 女優さんたちがサバサバしてるから? 著者の筆致が、明るいから? にっかつ裏話的でオナゴも読んでいて平気です。 
        だけども、女優さんたちの写真はすごくお色気あり。誌面からにじみ出るフェロモン、っつー感じ。これほんと。今はテレビでよく見るあの人もこの写真のこのお色気はどうなん? 
        にっかつ新人女優コンテストの小さな写真もありますが、最終審査は全員ノーブラだそうで、目が点…。当然ですか? 
         
        出てくる女優さん…小川節子、鹿沼えり、朝比奈順子、高倉美貴、小川亜佐美、美保純、麻吹淳子、田中真理、片桐夕子、小田かおる…。 
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         阪神ファンの気持ちって? 
        『タイガースへの鎮魂歌 河出文庫』 
        (玉木正之/河出書房新社) 
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        1985年の阪神優勝のドキュメントです。 
        昔、島村洋子さんが、著書の中で言っておられましたが、「幼稚園の送迎バスの中でも、運転手のおじさんが六甲おろしを流していた」と。関西人は、人生のどこかで阪神ファンになるようにできてるって。 
        ボーヴォワールみたい? 関西人は阪神ファンに生まれるのではない。阪神ファンになるのだ。ドドーン。(いや、そんな感じがしたもんで。) 
        島村さんも、<勝っても勝たなくても関係ない><勝っても勝たなくても楽しい>と書いていたように、この本に出て来る阪神ファンの方々も、何やら同じなんです。スタンスが。 
        楽しそう。そして、いつも阪神への感謝の気持ちがあるところが素敵。こんな風に人を愛せたら素晴らしいかも。と、全然野球と関係ないところで楽しんでしまいました。私のような門外漢には、思いがけない阪神優勝をめぐる人生模様の活写が愉快ですし、かと思えばツウなデータの解析もあるので、野球好きもイケそうです。(但し、阪神ファンのみ?) 
        それにしても、だいたい20年周期でやってくる彗星みたいなものでしょうか、阪神優勝って?→野球つながり 
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          和田誠さんのヤりたい女優って? 
        『ド・レミの歌 中公文庫』 
        (平野レミ/中央公論社) 
          
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        平野レミさん、近年またまたブレイク中ですね。テレビで見かける度に、愉快な人だなぁ。ウチに嫁(?)に来てほしいよ。と、思っておりましたが、エッセイを読んで、ますます好きになりました。 
        素敵です。 
        明朗快活な内容でして、ここまでアケスケーに書いてもいやらしくないところが、なかなか珍しいです。人徳かなぁ? うん。人徳としか思えないね。天衣無縫。純粋。と、解説の黒柳徹子さんも言ってます。その通り! 
        で、これに出てくる旦那さんの和田誠さんが、また、涙が出るほどいい方なんですわ。作品しか見知らなかった私、その妻の語る人となりを知り、作品通りの人なんだなぁと、心底感心しました。 
        ただ、その天衣無縫な妻に、「夫はテレビを見ていて、好きな女優さんや歌手が出てくると<あれとやりたい>と口走る」などと書かれていて、微苦笑させられましたがな。あはは。さて、誰だと思う? 
        関連して→御夫婦ランキング(実在編) 
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         おにやんま7cm、あおだいしょう2m。 
        『地球─その中をさぐろう─福音館のかがくのほん』 
        (加古里子/福音館) 
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        なつかしいです。子供の頃から、ミニチュア好きだったワタクシ、かこさとしさんの絵本が好きだったんですよねー。細かいところまで、描き込まれていますでしょ? うひょーと思って何回も眺めていたのを思い出します。 
        さて、その加古さんが、例の加古節で、地球の中を案内してくれますよ。地球の表層の断面図。平地、山間部、山地、市街地まで。そこにいる生物は大きさが示されています。 
        とのさまばった6センチ。どくだみ20センチ。めだか3センチ。やまいも1メートル。たまごだけ15センチ。むささび35センチ。つきのわぐま2メートル。くり15メートル。…。 
        しかも著者の目線は段々と上へ遠ざかり、しまいには宇宙の俯瞰になります(海王星:公転周期165年衛星2とか)。 
        さらに、巻末には登場する生物や物体の詳細な索引がついていまして、ふきのとうが出てきたのは何ページだったのかと、調べることが可能。くす。ちょっと笑っちゃうくらい偏執的。子供ってこんなん大好きなんですよねぇ。私だけ?じゃないはず! 
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         人間がやったほうがいいんだ! 
        『俺はプロフェッショナル 天山文庫』 
        (村松友視/天山出版) 
          
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        おもしろい!! 
        小ネタ好きにはたまらん本です。前から知りたかった謎が、この1冊で相当解決しましたもん。 
         
        義眼製造業、筆跡鑑定業、白アリ退治業、ピアノ調律業、民間天気予報業、葬儀業、サーカス団員、マツタケ栽培業、錦鯉養殖業、剥製業。 
        ─そんな、世に隠れてるマイナー職業の謎を、その道の人に実際に話を聞いて、解明しています。 
         
        私は、特にピアノ調律業と義眼製造業に注目。ピアノはね、絶対音感で調律するのではないそうです。やる人によって違っていて、それはそれでいいみたい。いやね、<1オクターブの音を人が割り振る>っていう事実にもう目が点ですよ。そうなんや〜。機械でもできるけど、人がやったほうが暖かい音になるんだって。しかもそれでいいんや〜。(音ってなんなんやろ?) 
        義眼の話も初耳ばっかりでした。そばにいても気付かないレベルまで来てるらしいですよ、義眼って。すばらしい。(笑ったのは、著者の村松さんが、私と同じく、調律や義眼に何か淫靡なイメージを抱いて質問しに行っては、違ってて反省してること。) 
         
        下谷二助のカバー絵と本文の小さなカットも、ほんの少しうれしい、オモシロ本です。→変わった職業ランキング 
        →サーカスつながり 
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         ベバリーヒルズなんや! 
        『ベバリーヒルズにこだわるわけ 映画の英語は生きている』 
        (清水俊二/TBSブリタニカ) 
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        翻訳の苦労話って面白いですよね。いつも関心を持って読みます。 
        さて、ただの翻訳でさえ大変なのに、映画の翻訳ともなると、ますます大変。場合によっては、文化の違いの説明や状況説明も兼ねながら、目で見てパッとわかる訳でないとダメなんですから。 
         
        ミステリーの翻訳で有名な清水俊二さん。じつは50年間もスーパー字幕のお仕事をしていたそうで、そんな映画の字幕の苦労話や裏話小ネタをたくさん教えてくれます。「なーるほど」とか「へぇぇ〜そうなんや」とか、楽しい驚きの詰まった、興味深い本です。 
        どんな台詞をどんな風に訳したかの実例も多く、面白い。 
        題にもなっているベバリーヒルズの件、インパクトありますね。正式にはベバリーなんですって。本当はベバリーヒルズ青春白書なんじゃん。 
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         えっ、フェラーリも? 
        『フェラーリ家のお友だち 集英社文庫』 
        (タカコ・H・メロジー/集英社) 
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        ちょっと〜、フェラーリがありふれた名前だってご存じでしたー? 
         
        著者のタカコ・H・メロジーさんは他にもイタリア関連の著書のある人ですね。プロフィールによると、フランス人と結婚して渡仏。イタリア在住とか。 
        そんな彼女が飛行機の中で知り合ったのは、イタリア青年のクリスチャン・フェラーリ君。でも、あのフェラーリとは何の関係もないんだって。ありふれた名前なんですってよ、イタリアでは。要するに、日本での「ホンダ」「トヨタ」「スズキ」なんかといっしょなんだって。うーん、わかりやすい例えですよね。ふ、ふーん。 
        とまぁ、これがこの本で一番、驚いたことでした。 
         
        そのフェラーリ君と縁あって、家族ぐるみのお付き合いが始まり…という羨ましいことばっかりの、明るく軽いエッセイです。それでもなんだか引き込まれてしまうのは、フェラーリ家の人々の話が楽しくて、イタリア人と日本人の相違も面白くて、しかも、出てくる料理がめちゃくちゃおいしそうだから!!たまらん!家族総出で作るトマトソース。牛挽肉入りのグリーンパスタのトルテッリーニ。そんな話が当たり前のように山盛り…。 
        素直に羨ましいぞぅ! | 
    
    
         こりゃ驚いた。 
        『小島隆雄のドールハウス ミニチュアワークの世界』 
        (小島隆雄/学研) 
          
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        ミニチュアは大好きで、本を見かければ、手に取ります。 
        きれいなもの、よくできているもの、なつかしいもの、そういうミニチュアハウスは数々あれど、こんなミニチュアハウスは初めて見ました。作り手が男性だからでしょうか? 
        ちょっと散らかった自分の部屋のミニチュア。バスケットのゴールがあったり、一面に絵葉書の貼られた壁があったりする、男の隠れ家のミニチュア。アメリカのさびれてるけど味わい深いホットドッグやさん。住んでみたくなるような、おしゃれな内装の家。 
        うーん、素晴らしい。こういうのもアリか!と軽く驚き、しばし眺めて心にグッと来るものを感じるんです。これは一見の価値アリです! 
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         ジュール・ヴェルヌの予言。 
        『二十世紀のパリ』 
        (ジュール・ヴェルヌ/集英社) 
          
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        この小説が発見されたときの状況がドラマチックです。 
        1989年、ジュール・ヴェルヌの曾孫ジャン・ヴェルヌが引っ越すことになり、動かせなかった金庫を破壊。中身を確かめずに袋に詰める。1991年、ふと思い立って中身を整理。『二十世紀のパリ』の草稿を発見する。ただちに真筆であると確認されて出版の運びとなったそうです。 
        その経緯や、この小説をめぐるいわく因縁について、冒頭・解説に相当のページ数がさかれていますが、無視してもかまわないです。 
        これは19世紀の人ジュール・ヴェルヌが、100年後の世界を想像して書いた空想未来小説ですので、<あのジュール・ヴェルヌがどんな未来を予言しているのか>、とにかく気になるという方は、本文だけ読めばオッケーなんです。 
        当たっていたり、違ったり。 
        科学技術については、割りと単純。 
        でも社会のシステムの話になると、ジュール・ヴェルヌは彼の時代の問題点をとらえ、<このままではこうなる>という危機感を予言しているので、私達は、現代社会の問題が過去の何に由来しているのか、を想像することができます。 
        主人公は詩人の青年。20世紀は功利優先の拝金社会で、彼が生きにくい世の中であるという大前提が、なんとも…凹まされますよね。 
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