■今日の特ダネ P09


▼東君平さん、三島さんちへ行く。

100杯目の水割り 講談社文庫 『100杯目の水割り 講談社文庫』(東君平/講談社)

テレビタレントが、「ADいじめなんて絶対できない。ADはそのうちディレクターやプロデューサーになるんだから」と言っていたことを思い出しました。 いえ、東さんは別段いじめられてはいません。が、むかーしに会った著名人の思い出話として、「あの人は知らなかっただろうけど、僕はあの人の家に通っていた」などと書かれると、ドキーッとされる人もいるだろうなと思った次第。だって、東さん、結構スルドくもあり、キビシくもあるし。 本書は、普通の人から有名人まで20人、東さんが彼らのウチを訪ねたり、会ったりした時の人物評と申せましょうか。 土門さんちと言えばあの土門さんちだし、谷内さんちと言えばあの谷内さんちだし、三島さんちもまさかと思ったけど、やっぱりあの三島さんちなんです! すごいね! 私の見たところ、一番、良い人なのは谷内六郎さんのようです。絵のまんまの人なんですね。「こりゃ天才だ大天才だ」と言って東さんの絵を褒めてくれ、デパートでの個展を開けるように口をきいてくれます。「10日間に数万人の入場者があって絵は売れなかったけれど画廊と同じ階の万年筆売場やレコード売場の売上げが倍増して個展は大成功だったらしい(本文より)」って(微笑)。 三島由紀夫さんに関しては、私は気の利く貴族のような人かと思っておりましたら、なんだか迫力と圧迫感のある書かれようで(でもいい人)、ほほぅとイメージが広がりました。 有名人はともかく、市井の人々の中には、感じの悪い人やダメな人や、ずるい人が登場し、なぜか侮られがちな東さんが次は一体、何をされるのかとドキドキします。また、じつは芯が固くて、きびしい見方をする東さんが何と批評するのだろうと、それもドキドキします。面白味もあるけれど、時に心も痛む1冊です。


▼タキシードには、レギュラーまたはウィング・カラーでプリーティッド・ブザムの白いシャツを着用しなければならない。着用にあたっては、スタッズ、カフ・リンクスを使用する(第5条第1項)。

ザ・ドレスコード 『ザ・ドレスコード―フォーマルに強くなる10カ条 MEN’S CLUB BOOKS SUPER EDITION』(婦人画報社書籍編集部編/婦人画報社)

表題は宇宙語ではなく、ドレスコードです(笑)。 10ヵ条とは言いますが、例えば第5条は第5項まであります。たくさんありますのよ。 第4条第1項「ディレクターズ・スーツのアクセサリー類はすべてモーニングコートのアクセサリーに準ずる」、そんなこと言われても、そもそもモーニングコートって、ディレクターズスーツって何? それはちゃんと図解で定義してくれてます。他にもファンシー・タキシードとか、スペンサー・ジャケットとか、そんなんあったんか?と思うカテゴリーがいっぱいあります。(むしろ知ってる方が少ないです。)どれをいつどこでどのように着こなすべきか。きっちり教示してくれます。なるほど~。 かなり親切設計で、「第9条ダークスーツ」では、グレー無地スリーピース+ワイドスプレッド・カラー・シャツの組み合わせの場合、タイはウィンザー・ノットで結ぶとワイドな襟とマッチする、英国調コーディネイトである、などと写真入りで説かれます。 さらに、第9条第1項「シングルのダークスーツは、オッド・ベストによって大きくイメージを変えることができる」では、シングルのダークスーツをアフターシックス風に簡単にイメージを変えて着る小道具はオッド・ベスト(変わりベスト)であり、例えば、ライトグレイのダブルのベストに変えると一段と礼装らしくなる様が、写真で解説されています。 たまらんです(笑)。な、なんかかっこいーやん。 実際の園遊会や晩餐会の写真に簡単な解説を加えることもしています。これで園遊会に招待されても大丈夫。 いわゆるムック本形態の248ページ。
『アラン・フラッサーの正統服装論』 ほど見て楽しくはありません。が、ムック本ゆえに、使いやすそうです。よくまとまっているのではないでしょうか。実用向き。 欲を言えば、男前のモデルを使ってほしかったかな(笑)。
→ミニ特集・メンズ・ライフ


▼上品なフライデー?

プレス・アイ2 ザ・セレブ 『プレス・アイ2 ザ・セレブ 1945-1985 文春文庫』(文藝春秋)

世界のセレブたちのワイドショー的瞬間をとらえた文庫写真集。小ネタが多いです。 カバーはオノ・ヨーコの秘書とディープキスするジョン・レノン。ほぉ~。 妻と間違えて(?)上院議員夫人の手を握るカーター大統領や、バストを測定されるソフィア・ローレンもアリ。バリシニコフとヌレエフの再会シーンもアリ。 左右の人差し指をそれぞれ鼻の穴に入れんばかりに見える(入れてはいません)デヴィ夫人もいます。これ、夫人にとっては痛恨の一枚だろうなぁ~。 若き日のエリザベス女王のポートレートの中でも傑作と言われる1枚もあります。快活に笑う美人です。 気にはなっていたけど、わざわざ調べなかった人々の顔も分かりました。ヘミングウェイの4番目の妻とか、ロマン・ポランスキー監督夫人とか。 また、当然のように添えられている文章の中にまるで知らなかった情報もたくさんありました。トルーマン大統領の娘マーガレットはミステリー作家になった等。 シリーズは全4冊出ていて、1はザ・ワールド、3はザ・スポーツ、4はライフ&ピープル。でも私が一番好きなのは、やっぱりこの2のザ・セレブ。古本としてはあまり珍しくないので、どうぞ探してご覧になってみてください。なかなか楽しめます。


▼まだあった、愛のゲームブック!

幻影の島 『幻影の島 愛のアドベンチャー・ゲームブック1』(マドリーン・サイモン 大出健訳/世界文化社)

ゲームブックです。そう、オナゴ向けの。 オナゴ向けゲームブックと言えば、 コバルトの『恋にVサイン ハッピーエンド・ゲーム・ストーリー』 がありましたっけ。でもまさか世界文化社さんまで出していたとは、まったく存じませんでした。 その名の通り、愛のアドベンチャー・ゲームブックです。悪い魔術師トレッグに財産を奪われ、父を盲目にされ、トレッグを倒すために旅立った兄は行方不明。男勝りのおてんばだったヒロイン(=あなた)は美しく成長し、お年頃。さて、どうするか。ちょっと、ネタバレますが、まぁ冒頭なのでいいでしょう。父母の懇願をきいて、ドレスを着て近所のボンボンの求婚を受けたらいきなりバッド・エンドでした(笑)。まぁ、そうでしょうね。 旅に出ればイケメンも複数登場するみたい。抜かりないね。


因みに、カバーは丸く穴の開いてるタイプで、カバーを外すと、本体はこんなの。さすがに華やかだな~。 世界文化社さん、少なくとも他に3冊は「愛のアドベンチャー・ゲームブック」を出しているようです。揃えたい気がしてきて困ります(笑)。
→ミニ特集・トンデモゲームブック


▼オニばばあの書き方!

ユーモアえかきの事典 『ユーモアえかきの事典(ハードカバー、旧版)』(東陽出版)

○と□が描ける人なら何でも描ける。すぐ描ける。すぐ覚えられる。ユーモラスな楽しい絵が描ける。そんな意図で作られた「イラストの描き方」の本です。だから確かに簡単。 ほんとだ~。感心~。 インド人もエスキモー人も、ギャングも、シスターも、河童も、飛行機も、こそ泥も、なんでも描ける~! しかもカワイイ。4コマ漫画風の絵柄です。すぐに漫画家になれる気がします。気のせいだけど。 家庭の人、学校の人、職場の人、日本のむかしの人、外国の人、むし、けもの、草花、のりもの、…多岐にわたる分類の中には、「想像上の人たち」というのもあり、中にはえんま大王や、魔法使い、オニ、そしてオニばばあもいました。 オニばばあ。想像上の人なのか…、そうか。ごっつ怖い顔です(笑)。 全319ページ。厚め。絵心のない人も見て楽しい。実際に役に立つ日が来るのかどうかはおいといて、机の上に1冊、あってもいいかもな~と、思いました。 ※同タイトルの新装版が流通中のようです。これは昭57の旧版です。


▼福田和也の恋愛術?!

悪の恋愛術 『悪の恋愛術 講談社現代新書』(福田和也/講談社)

まさか福田和也に恋愛を、語られる日が来るとは! あの福田和也じゃないんじゃない? と略歴を確かめましたが、間違いないようです。 どんな辛らつな意見だろうかとびくびくしながら読んでみたら、シビアではありますが、意外に古典的でした。そして意外にも自分の経験をまじえて語っていて、読者に対して友好的です。へぇ~。こんなところもあるんだな~。 小説もよく引用されています。恋愛を理論的に説かれて「なるほどなぁ~」と思いたい人は嬉しいかもしれませんなー。私はセンチメンタルな世界に生きておるので、「なんかな~」と思いました(笑)。 彼の引き出しをあちこち開けて、出てきた断片に恋愛をからめて、うまく話をまとめていっている、「論客福田和也・恋愛バージョン」と申せましょうか。
→福田和也と言えば・毒舌ランキング
→恋愛論つながり


▼マジで?!

布のファンタジー 『布のファンタジー―ハンカチの3Dアートの世界』(菊田せつこ/文化出版局)

多分、このタイトルを見た人のほとんどが誤解してるんじゃないでしょうか? 「ハンカチの3Dアート」。 これは、立体的な絵の描かれたハンカチのこと、 ではないんですよ。御存じでした? 私なんて、てっきり凝った絵のハンカチのことだろうと思い込んで、本書を開いてびっくり仰天しました。あぁ~、もどかしい。小さな画像では全然伝わらないんだもん。 あのですね、ハンカチを切り貼りして、正真正銘、文字通り「立体の」絵に仕上げているのです。凹凸があります。花びらがふんわり膨らんでる。「切り抜いた絵柄を、形を整えながら原画の上に重ねてレリーフ状に仕上げていく」のだそうで、目をみはるようなできばえです。 ハンカチというものの性質上、お花類が多いですが、「薔薇とか鈴蘭とか、そんなロマンチシズムはちょっと…」と敬遠する方も、私のお気に入りの一枚「深い森の中の狩人たち」や「いつまでも心に優しい物語」を見てやってください。奇声を発したくなりますから。「うぇぇぇっ?」って。これがほんとに元ハンカチなの? あ、パッチワークとは全然違いますよ。ハギレで作る点描風とかでもないですよ。絵柄をそのまま使うんです。 えーとね…、とにかく見て(笑)。
※カラー40p、残りはモノクロで解説。


▼横溝正史が明るい…。

真説金田一耕助 角川文庫 『真説金田一耕助 角川文庫』(横溝正史 和田誠カバー絵/角川書店)

どうやら私はカン違いしていたようです。横溝正史というのは、どろどろした陰惨な話をシーリアスに暗ーく書いている変な人だと思い込んでいたんです。 なんかね、明るくてビックリ。 そう言えば、金田一さんも飄々とした味のある探偵さんだし、犬神家の一族の死に方も結構笑えるし、横溝さんは、じつはかなりエンターティメントの精神で、「フフッ」なんて思いつつ書いていたのだ、と初めて思い当たりました。遅いですか? 金田一耕助にまつわる小ネタや、創作の裏話、のん気な日常など、意外にも明るいエッセイ集です。 「金田一耕助の収入」という項では、「不可解なのは金田一耕助の収入である」などと、考察しています。不可解ってさー、アンタが書いたんちゃうんかー。『獄門島』を検討して曰く、「かれに謝礼をくれそうな人物のうち、ひとりは死に、ひとりは発狂、ひとりは失踪してしまった。獄門島へむかう途次、かれはパトロンの久保銀造のもとに立ち寄っているから、そこで旅費ぐらい調達してきたのかもしれないが、この事件は完全に無報酬だったと思われる」。思われる、じゃないよ(笑)。「ひとりは死に、ひとりは発狂、ひとりは失踪してしまった」ってところが、作風を端的に表わしていて、笑えますよね。 映画化の件では、(原作を読んで)犯人が誰か分かってるのに映画がヒットするって不思議、みたいなことも言ってます。そうよね~、キャストですぐ犯人が分かるんだけど、でも見ちゃうんだよね~と、頷いてみたり。 横溝正史大好きな方はもちろん、「横溝正史ってヤツはよ~」な方も楽しめそうです。


▼金のないときゃ俺んトコ来い~。

自分さがしのパトロネージュ 『自分さがしのパトロネージュ ダヴィンチ・シリーズ』(ダヴィンチ倶楽部編/メディアファクトリー)

♪俺もないけど、心配すんな~ というわけには行かないのが、パトロンというものです。 金のことなら任せろ! それがパトロン。本書はパトロンのすべてが分かる本(パトロネージュもパトロンとだいたい同じと考えていいようです)。 いいなぁ、パトロン。私も欲しいよって、そんな若いお嬢さんに何でも買ってくれるパパというパトロンじゃないですよ。芸術家の後援者や相撲のタニマチ。お金だけじゃありません。絶滅寸前の動物や地球環境を救う運動、それもパトロン。そのように考えていきましょう。 歴史上の有名なパトロネージュの話(メディチ家とか足利義満とか)もあります。 身近なパトロネージュの話はほんとに身近。小説を買う読者という存在、漫画家を育てる編集者、宝塚ファン。「それっぽい」ところでは、美術館のメンバーシップ制度に参加するのもパトロネージュ。そうか。 発展途上国へ自転車を送ること、途上国の子供たちの足長おじさんになること、それもパトロネージュです。(1991年の版なので情報は古いかもしれませんが)やる気になったときの連絡先も記載されている、前向きな本です。 あんまり縁のなかった価値観に、目からウロコでございます。


▼なぜ「武士に二言はない」のか?

ビジュアル版 対訳武士道 『ビジュアル版 対訳武士道』(新渡戸稲造 奈良本辰也訳/三笠書房)

あんまり大きな声で言えない気がするので、ちょっと小声で言ってみます。 私、新渡戸稲造が、『武士道』を英語で書いたとは、存じませんでした。 英語で? すごいなぁ、新渡戸稲造。 何かと話題の名著「武士道」を対訳で収録。日本人にとっては、訳があることよりも、新渡戸さんの原文があることのほうが、意味があります。名訳と言われる奈良本辰也の、分かり良い訳を読みながら、新渡戸さんがそれを何と英語で言ったのか、必ず興味を覚えるからです。 それで引き比べてみて、なるほどと思う。 多分、外国人もすごく分かりやすかったことでしょう。明晰だもん。外国語で書く時、自分の中でも明晰でないと書けないとはよく言われることです。 外人さんにも分かるように、諸外国の歴史等も例に引きつつ、ビシビシと述べられる武士道という一つの思想。「これが武士道なら、あの小説に出てくるあの人は武士だったんだな」と、改めて思ったりもしました。 武士道、それはかなり身近な一つの生き方でもあると気付かされる、目からウロコの1冊です。 新渡戸稲造の生涯やその時代についても解説有り。


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