迷子になったらまずHOMEへ

■金魚つながり
ふと思い付いて。やけにかわいいイメージで心惹かれます。

▼大好きさ。

「蜜のあわれ 講談社学芸文庫」
室生犀星/講談社)

中編。
犀星の何が好きってこういうところが好きですね。
赤い金魚と老作家の会話で成り立つ、この作品。
金魚は作家のことを「おじさま」って呼んでます。
えぇわぁ。
おじさまは「よしよし、ほらおいしい井戸水だよ」とか「日向においてあげよう」とか
言っちゃって世話をします。
意外にもコケティッシュな金魚と少しエッチ(なのか?)な話もしてみたり。
未読の方は是非に〜!

講談社学芸文庫版は他の作品もいくつか収録していますが、
この作品だけをイイ挿絵で大人の絵本風にして出版してほしいなぁ。
(と、思ってたら、素敵な装丁で出版されたらしいですね?)

▼おもしろい。

「金魚屋古書店出納帳(コミック)」
(芳崎せいむ/少年画報社)

お友達にもらいました。
おもしろい!
古本好き、の中でも特にマンガ好きにはたまらんでしょう。
うまいですね。話が。
ちょっと涙ぐんだり、微笑したりしましたもん。
古本マンガの絡め方も絶妙〜。

今まで蔵書ミステリ、古本ミステリとかはよく見かけましたが、
これは、<古本マンガほのぼの短篇集>。
「ドラマチック」と「古本マンガバカ一代の心情」、そのバランスが大変いいです。
→蔵書家つながり

▼趣味の方に。

『金魚 カラーブックス』(松井佳一/保育社)

いつもながら、カラーブックスらしい丁寧な編集で、
金魚のあれこれを写真で楽しめます。
個人的には、金魚グッズ(金魚柄の骨董、絵画)に大注目。

▼人生って。

『永遠の一日』
(リチャード・ビアード 青木悦子訳/東京創元社)

カバーだけが金魚かと思ったら、さにあらず。
ちゃんと話のすじに絡んできました。なんか嬉しい。

「1993年11月1日。
EUが誕生し、フェデリコ・フェリーニが世を去り、リバー・フェニックスが急逝したその日、イギリスのどこかで、ヘイゼル・バーンズとスペンサー・ケリーが生まれた。
その日、二十四歳のスペンサーは、ヘイゼルと一緒にベッドにいた。
その日、十歳のヘイゼルは海辺に、十歳のスペンサーはサッカー・コートにいた。
その日、十二歳のヘイゼルとスペンサーは、砂丘で手を取りあって、飛んでいく飛行機を見ていた。
その日、十四歳のヘイゼルは、スペンサーに電話をかけようとした。
その日、十六歳のスペンサーはヘイゼルからの電話を受けた。
その日、十八歳のヘイゼルと、スペンサーは…
その日、二十一歳の…
その日…
同じ一日、違う時間軸の中で、繰り返し巡り会う恋人たち。おかしくて、どこかひねくれていて、やさしくて、不思議な恋の物語(あらすじより)」

スペンサーとヘイゼル、二人の人生における一日の情景が延々と描かれます。
彼らは時に0歳、時に10代ですが、それはいずれも1993年11月1日のできごとで(!!)、
どの彼らも、それぞれ違う人生を送っています。
(中の一つだけは、連続した二人のエピソードであると分かります)
非常に夢中に
なりづらい話で、
でもいつかは、このエピソードの積み重ねが何事か劇的な展開を生むのだ!
と思ったら、そういうことは
ありませんでした。
それでも腹が立たないところが、この本の面白さであると、申せましょう。
人生は非常に複雑な模様の織物のようなものであって、
私の動き一つで模様は変わってしまうし、予測不可能。
無限の可能性がパラレルワールドのようにそこに広がっている─。
そういうことかなと思いながら、読後、ふと、俯瞰で自分の人生を見る心地がしました。
読後感は決して悪くなく、こう見えて意外にも(笑)、幸せな物語、だと思います。
突飛な構成のせいで、思想まで突飛に思えますが、じつはそう変てこりんな考えではなく共感できると申しましょうか、
ヘイゼルの言う「しるし」や「運命」にはニヤリとしてしまいました。
特に人生の岐路で悩める時期には近しい考えだと思います。

あとね、著者による最後の一行の情報が、興味深いです。
おすすめではないけど、読んで損もしない1冊。