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■詐欺師つながり
詐欺師。現実には決して尊敬できない職業ですが、泥棒さんと同じく、フィクションの中で出会うと素敵なことが多いです。
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▼それからどうなる?

『アルバート公売ります ハヤカワ・ミステリ文庫』
(マイクル・バタワース 小倉多加志訳/早川書房)

「七番目の妻とロンドン観光に来ているテキサスの億万長者から五百万ドルだましとる。刑務所帰りの根っからの詐欺師とお人好しの観光ガイドがたくらんだ計画は、なんとも人を食ったものだった。こともあろうに、由緒ある偉大なアルバート公の記念碑を競売にかけ、記念碑にぞっこんのテキサス男にそれを競り落とさせようというのだ。綿密な計画の末、ついに競売会が催されたのだが、はたしてアルバート公は五百万ドルで売られてしまうのか? 詐欺師二人組の破天荒な作戦とその思いもかけぬ顛末をユーモラスなタッチで描く痛快コン・ゲーム小説」(あらすじより)

あらすじから察するに、王道かな? いいね、いいね〜と言いたくなる感じ。
心躍る、良いあらすじです。

▼古き良きアメリカにて。

『ペーパームーン ハヤカワ文庫NV』
(ジョー・デイヴィッド・ブラウン/早川書房)

残念ながら映画「パーパームーン」は見ていないのですが、
最近の映画「マッチスティックメン」(ニコラス・ケイジ主演)を思い出しました。
あれは、娘っこがティーンエイジャーだったから、微妙な色気がありましたよね。
でも、これは娘が11歳。イレヴン・イヤーズ・オールドですから。
ただただキュートです。
彼女と、父親代わりで詐欺師の中年男との珍道中。
1930年のアメリカ、古き良き時代です。えぇわぁ!
→ミニ特集・どんな旅に出る?
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▼幽霊の書いた小説?

「永遠も半ばを過ぎて」
中島らも/文藝春秋)

写植工の主人公がヤクでラリって目覚めると、
見たこともない文章ができあがっている。
彼と詐欺師の友人は、それをユーレイの書いた小説として
出版社に売り込むことを思いつく。
「今夜、すべてのバーで」「ガダラの豚」の著者にしてみれば、
ちょっと薄味ではあるけれど、着想がなんとも素敵じゃないですか?
題もいい。永遠も半ばを過ぎて。繰り返して陶然としてしまう良い響き。
これが他の題ではこうはいかないでしょう?
→ドラマな題ランキング
→中に本が出てくる本
→幽霊つながり

▼古典ですか?

「スティング ハヤカワ文庫NV」
(ロバート・ウィバーカ/早川書房)

もうずっと前、ポール・ニューマンの映画を見ました。
当時、すでに古い映画だったと思うのですが、
ずいぶん面白くて、ワクワクしたことを覚えています。
もう1回見ようかしら?と、今も思うほどあの時の感激だけは記憶鮮明。
残念ながら、詳しいスジ等は忘れちゃったんですけどね。
あの映画の原作です。ノベライズではなく原作ですので、
また違った楽しみがあるでしょう。

因みに映画の『スティング2』はイマイチでした。

▼優秀アンソロジー。

ハリイ・ライムの回想 詐欺師ミステリ傑作集』
(小鷹信光編/大和書房)

収録作は、
ジャック・フォックス「おばあちゃんに脱帽」、
トマス・A・イーガン「カモのお返し」、
クラーク・ハワード「バードより愛をこめて」など、全15篇。

ここだけの話、ちゃんと読まないうちに売れていった1冊です(笑)。
もう一度会いたいなぁ。
※恐らく、『詐欺師ミステリー傑作選 河出文庫』と内容同じだと思います。

▼ドラマで見る?漫画で読む?

『クロサギ1〜8巻 ヤングサンデーコミックス ※送料無料』
(黒丸 夏原武:原案/小学館)

基本は一話完結(前後編や数話連続もあり)の連作短編集です。
素人を食う詐欺師はシロサギ、シロサギを食う詐欺師はクロサギ。というわけで、クロサギたる主人公・黒崎君が毎回現れるいろんなシロサギに天誅を下すという内容。ただ彼自身は天誅なんて決して言わず、仕事だから食っただけ、と言うでしょう。正義の味方を標榜したりはしません。でも読者にとっては、まさに天誅。毎回、悪い詐欺師がやっつけられるところを見物できます。

黒崎君はその生い立ちにより、シロサギに強い憎悪を抱いています。彼はまたシロサギの被害者を哀れみつつ、憤っています。簡単に騙されたことに。その心の揺れが味わいのひとつ。
コンゲーム、情報屋、その手に関心のある漫画好きなら、きっと楽しめます。
2006/4/8現在、続刊中。定価¥530(税込)。

▼楽しんで読みたい。

『詐欺師の楽園 河出文庫』
(種村季弘/河出書房新社)

「ヨーロッパのさまざまな詐欺師たちがまきおこした事件の数々を軽快なタッチで物語り、愛すべきトリックスターたちの肖像を描き出す痛快エッセイ!!『ぺてん師列伝』姉妹篇。」(あらすじより)

種村さんの洒脱な文章で詐欺師たちの華麗なエピソードが紹介されます。
詐欺事件のエピソードと言えば、それだけで楽しめますが、
それに加えて、著者の種村さんの博覧強記ぶりと、
確かにそこにいる種村さんの気配が感じられて心地よい1冊です。
もっと長生きしてほしかったなと、思わず感慨に耽りました。
小説ではないけど、飽きさせません。
※岩波現代文庫で復刊。流通中。

▼侍女に化ける。

「荊の城 上・下 創元推理文庫」
(サラ・ウォーターズ 中村有希訳/東京創元社)

歴史ミステリの大長編。
ヴィクトリア朝ロンドンが舞台。
ヒロインはスーザン(スウ)。掏摸(スリ)です。
みなしごで、育ての母はサクスビー夫人。
故買屋イッブズ親方の元で、悪いことに手を染めながらも、大切に育てられます。
或る日、通称「紳士」という
詐欺師がやって来て、スウは詐欺に加担することに。
とある城に住むお嬢様の侍女としてもぐりこみ、「紳士」がお嬢様と駆け落ちするのを助ける計画です。
さて、どうなるか?
以下、反転で微妙にネタバレ、御注意。

「どんでん返し」という書評を読んだので期待しておりましたが、あんまり驚きませんでした。
…「どんでん返し」と言われていたから驚かなかったのかな?
いやだって、ああ来たら、ああいう展開しかないでしょう。
著者も別段、「どんでん返し」を狙ってはいないはず。いえ勿論狙っているだろうけど、主な目的ではないはずです。


『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』(アレックス・シアラー)を思い出しました。
むしろミスリードがあった、『13ヵ月と〜』のほうがサックリ騙されたかもしれません。



驚かなくても充分楽しめる長編です。私は一気読み。
高カロリーなものをがっつり食べたい方におすすめです。
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※流通中。