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■記憶つながり
最近見た映画「メメント」に触発されて記憶モノつながりです。
「記憶」は大好きなテーマです。不思議なシステムだなぁと思って、常日頃注目しています。だから、記憶喪失とか、昔の記憶を辿るとか、そういう話には目がありません。
ところで、このつながりを作るにあたって、実物を参照せずに書いていたところ、後で確認したら、まったく違う話として記憶していたものが殆どでした。テキトーな記憶力です。

▼一人四役の離れ業。

「シンデレラの罠 創元推理文庫」
(セバスチャン・ジャプリゾ/東京創元社)

フランス人の書くミステリって、なんかちょっと変わってますよね? カトリーヌ・アルレーとか。ルルーとか。うまく言えないんですけど。風土? 国民性? そこへ行くと、日本のミステリって外人にとっては、どんな味わいなんでしょう? 海外での評価は?

さてこのシンデレラの罠ですが、
「私は探偵にして、証言者にして、被害者にして、犯人である。」
一人四役の離れ業で話題になったミステリです。
ヒロインは大金持ちの遺産相続人。親友(♀)と火災事故に遭い、親友は死亡。自分は全身に火傷を負いながら命をとりとめましたが、記憶がありません。私は誰? 誰なの?
→フランスつながり
→極私的記念碑的ミステリランキング

▼ぬぉ?と思って読み返したり。

「消された時間 ハヤカワミステリ文庫」
(B・S・バリンジャー/早川書房)

あらすじに「…(前略)…しかし私は憶えていない。
完全に記憶を失っていたのだ! 
私は記憶から消された時間を取り戻そうとする。
だが、手がかりは千ドル紙幣一枚だけ─
ミステリ作家中屈指の技巧派が放つ、
類い稀な意外性に満ちた傑作
」。と、ある通りなんですが、
冒頭、主人公は病院で目覚め、問診される。
九死に一生を得たんだけど、記憶喪失。
─のはずなのに、次の章では、彼とそっくりの死体の検死がされています。
「えっ、なになに?」と思って読み返してみたりして。
「一体、どういうこと? そして私は誰?」
と俄然読書意欲掻き立てられます。ただ、まぁ
すぐにわかっちゃいましたけどね。
あの袋綴じミステリ
「歯と爪」のバリンジャーの記憶喪失ミステリ。
さらっと一読の価値はあると思います。
 
→関連して

▼火曜サスペンス。

「優しすぎて、怖い 文春文庫」
(ジョイ・フィールディング/文藝春秋)

ヒロインは買い物に行って記憶喪失に。
夫という人物はお金持ち。かわいい娘もいる。でもなんだか納得できなくて…。
そしてみんなが優しい。優しすぎて、怖い!
─ひっぱり方がうまいですよね。題の勝利?
火曜サスペンス劇場とかの原作にちょうどいい感じです。
→ドラマな題ランキング

▼SF的記憶喪失。

「ハイペリオンの没落」
(ダン・シモンズ/早川書房)

キーとなる登場人物が段々若返っていく病気です。時間遡行症。
例えば、朝起きると1歳若返っている。その場合、その1年分の記憶はないのです。
記憶は段々失われていくのです。
それが、この物語世界にどう関係するのか、そしてその娘の運命は?
日常的なSFでなくて、宇宙が舞台ですから、少しヘヴィなSFかと思いますが、
壮大な物語が好きな方にはおすすめです。
これの前作「ハイペリオン」とセットの方がよろしいかと。
※文庫でも流通中。当店在庫はハードカバー。

▼昔言ってたあれ、どうなったんだろう?

「パラダイス・モーテル」
(エリック・マコーマック/東京創元社)

(カバーの紹介文が激烈にイイのでそのまま引用、ココから)
ある町で、ある外科医が妻を殺し、バラバラにしたその体の一部を四人の子供の体内に埋めこんだ。幼いころ、そんな奇怪な事件の話をしてくれたのは、三十年間の失踪から戻って死の床に伏していた祖父だった。いまわたしは裕福な中年となり、ここパラダイス・モーテルで海を眺めながらうたた寝をしている。ふと、あの四人の子供のその後の運命がどうなったか、調べてみる気になった…虚実の皮膜を切り裂く〈語り=騙り〉の現代文学。
(引用、ココまで)
こういう、
「あれって、どうなったんだろう?」と思って調べてみると…って話
なんとも言えない興趣がありますね。 
→モザイクつながり

▼記憶のシステム

「記憶 講談社選書メチエ」
(港千尋/講談社)

記憶は一体どんなふうに蓄えられていて、どんなふうに使われるのか?不思議ですよね。ある事柄から、どんどん連想がひろがっていく、しかも無意識に。昔のことを頭の中でひっぱり出してる。でもひっぱり出すまでは、どこにあるのか姿も形も見えない。チェスの名手VSコンピュータは最近どうなってる?
→つづき→詳しくは…
→チェスつながり

▼さらっと。

「409号室の患者」
(綾辻行人/南雲堂)

綾辻行人が随分若かった頃の作品だそうです。初期作品。
書けない時期を経てようやく形にした1作、ということで、
著者にとって思い入れのある作品のようです。
デビュー後、さらに推敲を重ねていたこれを、EQ誌上に発表。
「セバスチャン・ジャプリゾの傑作
『シンデレラの罠』への
オマージュのつもりで(あとがきより)」だそうですよ。
あ、やっぱりね。
「事故で失った記憶」、「わたしはいったい誰なのか?」という帯から
『シンデレラの罠』かな?と、思っていたので納得しました。

事故で記憶を失った409号室の患者が、混乱した気持ちを整理するために、日記を付けることにします。実際、この本は開くと日記帳のような体裁ですから、他人の日記を読んでいる臨場感アリ。
夫婦で同乗していた車の事故。夫は死亡。私は妻の園子だ、園子の名前に聞き覚えがある。
と思ったけれど?
本家『シンデレラの罠』の方がそりゃーイイですが、
中編でさらさらっと読めますので、おヒマな時や、飛行機、列車の中ででも。
ある程度驚かせてくれます。私はね、あそこで分かっちゃいました。テヘッ(エラそう)。
→日記つながり
→綾辻行人つながり

▼他に…
「飛蝗の農場 創元推理文庫」
(ジェレミー・ドロンフィールド/東京創元社)

「解体屋外伝」(いとうせいこう)